「エルザタワー55」日本初のタワーマンション、17年目の大規模修繕
目次
工事の難度を高めたのは、185mの高さと複雑な外観フォルム
竣工当時、日本一高いマンションとして話題を呼んだ「エルザタワー55」の大規模修繕工事は、2015年3月、築17年目に始まりました。管理組合内に修繕委員会が設置されたのは2008年(築10年)と早かったものの、185mという建物の高さゆえに「元施工会社しか工事できないのではないか」「工事の周期が国交省の基準に当てはまるのか」といった課題が続出したといいます。これらの課題を解決し650世帯の合意形成を取るために、コンサルタント会社を公募し、5年後の13年8月に東京建物リサーチ・センター(以下TRC)と契約を締結しました。この間、5年の歳月を要したのも、タワーの難しさの表れといえるでしょう。
2013年9月TRCが建物調査を実施、2014年6月 施工会社の公募スタート
第1回目の大規模修繕工事が、外壁のタイル補修や塗装、防水やシーリング工事が中心となるのはタワーマンションも同様ですが、大きく異なるのは仮設工事の方法です。特に「エルザタワー55」は低層・中層・高層で外観フォルムが複雑に変化するため、いかに仮設工事を行うかで、工期や工費が大きく左右されるのです。施工会社の公募に対して「応募してきた7社の内訳は、ゼネコン1社、改修専門会社5社、サブコン1社でした。書類審査で4社に絞り、現地調査と見積もり提出を依頼。情報漏洩と不正行為防止対策として、各社に調査時間を割り当て、匿名での調査としました」(生活環境広報委員広報担当・舟津雅美氏)。同年8月、見積額とヒアリング審査で3社を選定。10月、理事会で1社に絞り込み、これを他社との比較資料を提示した上で通常総会に提案し、同総会にて清水建設子会社のシミズ・ビルライフケアに決定となりました。
施工会社選定の決め手は、設計仕様書以上の仮設工事の提示と熱意
施工会社へのヒアリングはTRCが中心となって、工事に対する理解度、仮設計画、居住者対策、組織体制、アフター保証体制などについて質問しましたが、調査不足、検討不足が明らかな回答もあったといいます。「シミズ・ビルライフケアは見積額も適切でしたし、応答も的確で熱意を感じました。居住者の車両と工事車両の動線を切り離す、子ども向けの説明会を行うなど、安心・安全に配慮した提案もよかった。設計仕様書以上の仮設工事の提示があったのもここだけでした」(エルザタワー55 第19期理事長 渡邉美樹氏)。
理事会が一枚岩となり万全に機能、予定通り2年で工事完了
工期は2年。1年目は風の影響で外側の工事が思うようにはかどらなかった分(風速10mで工事中止)、内側廊下の工事を進めるなどして、結果的に予定通り2年で工事は完了しました。「理事会が一枚岩となり、万全に機能できたことが成功の秘訣だったと思います。居住者の維持管理に対する意識も高く、本当に助けられました」(渡邉氏)。理事会は、建物診断の結果や工事などについてたびたび説明会を開催し、隣接する小学校に登下校時の注意喚起を依頼したほか、工事中は居住者全員で安全が確保されているかを見回る「ZA(ゼロアクシデント)運動」を実施。気づいた点や要望をシミズ・ビルライフケアに伝え、反映してもらったといいます。さらに、管理会社の大京アステージも徹底協力しました。コンサルタントや施工に手を挙げることなく「タワーマンションの大規模修繕を勉強させていただく」という姿勢に徹し、理事会の立場での活動に終始したのです。90年代後半から急増したタワーマンションの大規模修繕工事が増えていくなかで、「エルザタワー55」は先駆的な事例として広く注目を集めるとともに、タワーの大規模修繕の成功例としても高く評価されています。